ゲーム研究入門もどき

素人による素人のためのゲーム研究入門のようなもの(と雑記)

文献紹介ツアー② 入門編・個人的おすすめ

こんにちは、私です。誰ですか?二代目です。ゲーム関連書籍をもさもさと曖昧に紹介するシリーズ、奇跡の続編です。

 

前回はゲーム研究関連の論文や書籍を読むと必ずどこかで名前を目にする、ある種逃げられない書籍群をご紹介しましたが、今回はそこまでではないけれど入門者が読むにはちょうどよさそうだったり、引用されているのを見かける書籍についてご紹介しようと思います。私の関心が心理学寄りなので、そっち方面のものが多いです。

 

 

 

 なぜ人はゲームにハマるのか/渡辺修司,中村彰憲

なぜ人はゲームにハマるのか

なぜ人はゲームにハマるのか

 

私はこれから入りました。正直本当の素人が入り口に立つための道標としてはこれが一番見やすく分かりやすいのではないかと思います。

目次を見てもらえれば分かる通り、ゲームの定義、STGの歴史、記号学、ゲームと身体、ゲームと視点、ゲームと世界、ゲームと触覚、ゲームに夢中になる理由、難易度バランスの演出と効率予測、ナラティブ、アーキテクチャなど、多様な文系寄りの研究アプローチが紹介されています。

どの項目も読みやすく分かりやすいので、まずはこれを読んでみた自分が興味のある分野について掘り下げていく、みたいなのがおすすめです。参考文献についての記述が薄く次にどれを読むべきか分からないというゲーム研究を体現するような問題点はありますが、さしあたって関心を高めつつ楽しく読むには良書でしょう。

 

 ニンテンドーDSが売れる理由/サイトウアキヒロ

ニンテンドーDSが売れる理由ゲームニクスでインターフェースが変わる

ニンテンドーDSが売れる理由ゲームニクスでインターフェースが変わる

 

ゲームニクス」の提唱者、サイトウ・アキヒロ氏による書籍です。どうでもいいんですがペンネームに中黒が入っていると参考文献リストに書いたときに二人いるみたいになるので困りました。

ほかにも二冊ほどゲームニクスについての著書がありますが、正直どれでもいい気はします。今回ご紹介しているのはその中でもフルカラーで印刷され、図や写真などが多く盛り込まれた「見る」タイプの書籍なので、お好みに応じてどれか選べばいいのではないでしょうか。

氏の語るところのゲームニクスとは

・誰でも、マニュアルを読まなくても使い方がわかる

・誰でも、いつのまにか機能を使い込めるようになる

これらを実現するためのUIに関する技術

です。サイトウ氏の関心は主にUIに向けられてはいますが、段階的な学習というレベルデザインや心理学に通じる要素や、このゲームニクスを外部化するという今でいうシリアスゲームゲーミフィケーションにつながる視点についても言及されています。

書名に「DS」とあり、内容もDSないし任天堂のデザインのノウハウにフォーカスした内容で、一般向けデザインハウツー本としての色が濃いですが、その知見はゲーム全般にあてはめて考えられることも多く、十分に有益なものであると私は感じました。

ゲームニクス、いまいち用語として扱ってる方は多くないように見受けますが、個人的には少々提唱者の関心とはズレますが「ただのシステムでしかないものをゲームにするためのデザインのノウハウ」「ゲームをゲームたらしめる何か」であると感じているため、そういう意味でときどき用いたりします。ほかに適当な用語が見当たらないので。

何にせよゲームにまつわる様々なノウハウを学術的なアプローチではないもののある程度体系としてまとめた概念として非常にありがたい研究だと思います。体系化が進まずとっちらかってる感が否めない混沌とした日本のゲーム研究の中で、ゲームニクスを学術的に裏付けるというのも、乱立した様々な知見を整理するためのひとつの指針になるんじゃないかと思います。

 

ビデオゲームの心理学/ロフタス夫妻

ビデオゲームの心理学―子どもの才能を伸ばすその秘密

ビデオゲームの心理学―子どもの才能を伸ばすその秘密

  • 作者: ジェフリー・ロフタス,エリザベス・ロフタス,西本武彦
  • 出版社/メーカー: コンパニオン出版
  • 発売日: 1985/09
  • メディア: 単行本
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心理学系のアプローチだと出てきたりします。古い書籍なので今の時代から見ると少々そぐわない記述もありますが、「強化と報酬」などゲームとモチベーションについての研究としてメジャーなアプローチに早々に言及しており、先行研究としての価値は高いように思います。

ここまでに紹介した二つの書籍は完全に読み物ですが、こちらは読みやすい文章でありながら研究書的性格もあります。心理学的な視点から考えてみたい方は一読の価値あり。